スマートフォン専用ページを表示
田舎の一匹狼
<<前の3件
..
2
3
4
5
6
..
次の3件>>
2022年05月14日
テレビ取材
久し振りに民宿をテレビに取り上げていただきました。
是非ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=fyIUgB13R44&t=605s
posted by mibu at 22:14|
Comment(0)
|
日記
2022年04月21日
イモリの楽園
山菜の中でもこれから最盛期を迎えるのが “ワラビ” です。
村内にワラビの群生地があります。
私有林ではなく村有林なので入っても問題ありません。
毎年、これからの時期にお越しいただくお客様はワラビ狩り希望のご要望が多いので、例年4月20日前後に発生状況を確認しに行っています。
今年は今日行ってきました。
まあ例年通りといった感じで、最盛期(5月に入ってから)に比べると1/5程度の発生具合、今日の時点でギリギリお客さんを連れていけるレベルです。
今年のワラビ狩りガイドも問題なく出来るでしょう。
発生状況の確認と同時に安全確認も行います。
●崩落や倒木はないか?
→ありましたが軽微なもので危険な状況ではありませんでした。
●マムシは出ないか?
→今日は出ませんでしたが、稀に出るので必ず長靴着用で参加してもらいます。
●他の注意点
→おそらく豚コレラが原因だと思われますが、ウリ坊(猪の子)の死骸が一頭、腐敗して悪臭を放っているエリアがあったため、屋外とはいえマスクの携帯を伝えます。そして絶対に近付かないように。
発生状況の確認良し、危険箇所・注意事項の確認も良し、あとはアレだな♪
アレを確認しに行くだけだな♪
毎年、ワラビの状況確認に合わせて楽しみがあるんです☆
準絶滅危惧種に指定されている “アカハライモリ” が大繁殖している小さな池を確認しに行きます。
このイモリの繁殖池を発見したのは2015年、ワラビの群生地周辺を何気なく散策していた時に見付けました。
発見した時はもう嬉しくて。
うちの近所でも、もうほとんど見ることはない、毎年田んぼで一匹会えるかどうかというレベルです。
それが大繁殖しているじゃないですか、もう嬉しくて嬉しくて。
こういう環境が人が滅多に寄り付かない山奥にちゃんと残ってたんだ〜♪って
“イモリの楽園” と名付けました。
発見した2015年以降、毎年4月20日前後のワラビの状況確認に合わせてイモリの楽園も観察しに来ていました。
2015年4月の発見時の写真
2019年4月に撮影した写真
毎年4月20日前後に来るとちょうど産卵期で、もの凄い数の卵が水中の草に産み付けられられていました。
写真には撮りませんでしたが、去年のこの時期もここへ来て、イモリの楽園が維持されていることを確認しています。
1人でイモリを眺めてニヤニヤしていました。
この環境がずっと残って欲しいと願っていました。
ずっと残って欲しい・・・
ただ心配していたことがありました。
ここから約1Km離れた場所でリニア新幹線の掘削工事が始まることです。
非常口とトンネル本坑(実際にリニアが走るトンネル)を繋ぐための斜坑の掘削工事が去年の7月からスタートしました。
掘削による発生土置き場も付近に設置されました。
心配しながらも掘削が進む方向が、イモリの楽園へ向かってくるのではなく反対方向だったので、たぶん大丈夫だろうと楽観視していました。
こうなってしまった結果はリニア工事(本工事だけではなく関連工事も含む)が原因だとは断言できません。
専門家ではないので、証拠を見せろと言われても見せれません。
今日、イモリの楽園を確認しに行ったら消滅していました。
その事実だけは変えようがありません。
2015年から毎年この時期に必ず見に来ていました。
毎年変わらないイモリの楽園がそこにはありました。
去年の7月から1Km先でリニアの掘削工事が始まり発生土置き場もできました。
イモリの楽園の消滅はそれが原因であるという証拠は私には出せません。
2022年4月21日(本日)の写真
池の姿が目に入った瞬間、愕然としました。
水量が少ない、水が錆びたような色をしている、池の周辺の草が枯れている、池の傍を流れている水も錆びたような色をしている、池の中を覗き込んでもイモリは一匹も居ない、卵もない。
この池からは全て絶えてしまいました。
去年の4月まではこの池がイモリの楽園があったことを自分の目で確認をしています。
たまらなく悲しく、同時にここに生息していたイモリに申し訳ない気持ちになりました。
ネット上で閲覧できますが、今回のこの発生土置き場における環境保全対策についてJRが公表している資料があります。
これから部分的に画像で紹介しますが、詳細を見たい方は下記URLをご参照ください。
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/efforts/nagano/_pdf/toyookamura-sakashima.pdf
豊丘村内発生土置き場(坂島)における環境保全について
この資料の中に周辺に生息する重要な種に対する環境保全措置が記されています。
アカハライモリについて
このように書かれています。
【工事施工ヤード周辺で2地点約20個体を確認。同質の生息環境が広く分布しているため、生息環境は確保される。】
2地点20個体しか確認出来ていないのに、心配する必要はないみたいなことを何故書けるんですかね?
他の種についても軒並み【生息環境は確保される】で締めくくっています。
適当に書いているとまでは言いませんが、負担を掛ける地域・自然環境に対して真摯に向き合っているとは個人的には思えません。
民主主義の国ですから、リニア反対よりも賛成が多ければその通りになります。
それは理解していますよ。
もう元には戻りませんが、ここにイモリの楽園があったという事実を深く私の脳裏に刻み付けておきます。
posted by mibu at 20:44|
Comment(0)
|
日記
2022年02月26日
今後の鹿個体数推移の予測
“駆除したら食べる、それが当たり前の社会を作る”
駆除された鹿のことです。
駆除された鹿の90%が廃棄処分されている現状に疑問を抱き、駆除した鹿を食べることが当たり前の社会にしたくて2015年に決意しました。
それ以降、解体法や調理法などを身に付けながら民宿業で資金を貯め、2020年に正式に保健所の許可(食肉処理業&食肉販売業)を取得しました。
今私が取り組んでいるステージは、黒字化モデルを作ってフランチャイズ展開していくことです。
ですが・・・
いや〜、ハードル高いですね。
なかなか思い通りに行きません。
前回のブログに書きましたが令和3年度のジビエ事業、黒字にはなったのですが微々たる黒字額でした。
作業に費やした時間から時給換算すると、時給たったの266円です。
さすがにこれではビジネスモデルとは言えません。
時給換算して確実に1,000円を超えるようにしなければなりません。
改善しなければならない点も前回のブログに書きましたが、これが改善できて時給換算で1,000円を超える事業になったとしましょう。
ですが、「さぁ、皆さん真似して下さい。ジビエ事業で黒字になりますよ〜」
とは言えません。
今の自分のやり方を他の人が真似できるとは到底思えません。
ジビエ事業のビジネスモデルを作る、その先に社会を変えるという目的があるから自分はそれを支えに頑張れていますが、これを生活するための仕事として取り組んだ場合、おそらく一般的には途中で心が折れます。
動物の命を奪って、それを売るって大変なことですよ。
前回のブログに挙げた改善点は今の私のやり方で黒字を出すための改善点です。
そこに他の人でも取り組める改善点も加えなければなりません。
その改善点は何かというと、
●鹿の入手
●残渣廃棄
この2点です。
一点目の鹿の入手について、現状私は「鹿が罠に掛かったぞ」という連絡を近隣の猟師さんからもらって、「分かりました引き取りに行きます」ってことで、猟銃を持って現地へ向かい自分で撃って血抜きをして回収してきます。
鹿の買取料は発生しません。
罠を掛けた猟師さんからすると捕獲した鹿の後始末が大変なので引き取ってもらうのが有難い訳です。
捕獲した猟師さんには行政から害獣駆除の報奨金が入ります(市町村によって異なりますがここ豊丘村では一頭につき15,000円)。
これは分業化する必要があります。
例えば、撃たれて血抜きされた状態の鹿を猟師さんから一頭1,000円で買い取る。
毎回毎回、自分で撃って回収してくるのは物理的、体力的な問題があります。私は男性なのでできていますが、女性が参入しようとした場合、自分で撃って回収してくるなんて到底無理です。
そしてそれ以上に問題なのが精神的なダメージです。
去年1年間で30頭、“自分で撃って回収してくる”をやりましたが本当に気が滅入ります。
最初のうちは猟師さんとの信頼関係作りや肉質の問題、鹿を知る、命に責任を持つという観点から、自分で撃って血抜きをするという経験は必要だと思いますが、ビジネスモデル化を目論んだ場合、買取制に移行していくべきですね。
二点目の残渣廃棄についてですが、当然のことながら鹿を解体したあとには残渣が出ます。
頭、足先、内臓、骨といった廃棄物です。
これら野生動物の解体施設から出る廃棄物を産業廃棄物と誤解しているケースが多々ありますが、法的な位置付けは“事業系一般廃棄物”です。
※長野県の環境部に確認済み
産業廃棄物業者に出した場合の料金は、ここの地域の相場では1Kg当たり100円です。
鹿の歩留率を20%とした場合、例えば体重50Kgの鹿だと40Kgが廃棄重量になります。
一頭解体した後の廃棄料に4,000円掛かる訳です。
しかも動物の残渣を引き取る産業廃棄物業者は限られ、ここの地域の場合だと車で約1時間掛かる場所にあります。往復2時間分の人件費と燃料代が加算されます。
廃棄料に足を引っ張られて到底採算は合いません。
なので、どうしても事業系一般廃棄物として処分する必要があります。
焼却もしくは埋設です。
当初は地域内の一般廃棄物焼却センター(近隣市町村合同で運営)を利用しようと考えました。
うちから車で約20分くらいの場所にあります。
料金は1Kgあたり18円なので、廃棄重量40Kgで720円です。
産業廃棄物業者へ出すのと桁違いに安く済みます。
ということでジビエ事業の計画段階で受け入れのお願いをしていたのですが、「それは産業廃棄物になるのでダメです」と断られました。
「いや、法的な位置付けは事業系一般廃棄物です、長野県にも確認を取っています」
2〜3か月くらいかな、豊丘村の環境課にも事情を説明して後押ししてもらって交渉したのですが結局ダメでした。
事業系一般廃棄物であるということは理解してもらったのですが、「ルールとして野生鳥獣は受け入れできないことになっている」とのことでした。
最初の「産業廃棄物だからダメ」という理由はどこへ行ったんだ・・・
まぁ、鹿の頭や内臓を持ち込まれるのが嫌だったのでしょう・・・
気持ちは分かりますが我々の税金で運営している公共施設ですからね。
ということで残された廃棄方法は埋設ということになりました。
焼却センターとの交渉に村の環境課を巻き込んだことで事情をよく理解してもらい、車に轢かれたタヌキや野良猫を埋設する山奥の村有地を使わせてもらえることになりました。
良かったじゃん♪ ちゃんちゃん♪
とはならないんですね、これが。
タヌキや猫を埋めるのと違って、鹿一頭分の残渣って平均40Kgくらいあります。
これをスコップで穴を掘って埋めるって大変だし、もともとタヌキや猫を埋めるために設けられた埋設場なので敷地面積がそれ程大きくないんです。
鹿一頭分の残渣でタヌキや猫8頭分くらいの面積を使ってしまいます。
しかも一番の問題点は野生動物に掘り返されることです。
タヌキやキツネ、ハクビシンなどが臭いに反応して掘り返して食べてしまうのです。
一年間使わせてもらった後、村の環境課から「このままだと使用許可はもう出せない、何か対策をするように」と注意を受け、埋めた後にネットを掛けるという対策を講じました。
これは効果がありました☆
タヌキ、キツネ、ハクビシンなんかの小動物に掘り返されなくなりました。
掘ろうとした痕跡は残っていますが足が絡んで掘れないのでしょう。
よしよし
と思っていたのも半年くらい・・・
今度はネットもろともズタズタに掘り返す動物が現れました。
イノシシです・・・
その光景を見た時は
もう絶望です・・・
掘り返された残渣は食い散らかされ悪臭を放っていました。
すぐに村の環境課に報告しました。
「イノシシが相手だともうどうしようもないです、ネットが意味ないです・・・」
産業廃棄物業者へ出すことを勧められたのですが、「それは絶対にできません」と応えました。
赤字になることが目に見えています。
なので、とりあえず現状のまま使わせてもらっていますが、イノシシの餌場と化しているので、埋めた翌日にはほぼ確実に掘り返されています。
使用許可が取り消される日もそう遠くはないでしょう・・・
そうなると、やはり焼却という処理方法に行き着く。
既存の焼却センターでの受け入れが不可なのであれば、新規に安い焼却炉を設置する必要がある。
調べてみると安いもので650万円・・・
個人では到底無理・・・
近隣市町村合同で一台所有するとかできないかな〜
と最近勝手に考えています。
駆除した鹿の残渣処分に困っているのはどこの市町村も同じです。
これから村に掛け合ってみます。
ということでビジネスモデル化に向けてこの2点の改善が必要ということが実践して見えてきました。
この2点は取り組んでいくとして、ここからは話を変えてジビエビジネスの今後の可能性について考えていきます。
「ジビエは採算が合わない」と言う話はよく聞きますし、私自身この業界に参入する際は散々言われました。
はっきり言います。
採算が合わないのは、やり方が悪いんです。
解体した後の残渣を安易に産業廃棄物扱いしていませんか?
その時点で採算は合いません。
一般廃棄物として処理する努力というか執念が必要です。
黒字を出す執念です。
現に令和3年度、微々たるものですが黒字が出ました。
黒字額が小さ過ぎるので、自分のことを“時給266円の男”と自虐ネタにしていますが、わずかでも黒字が出たということに誇りを持っています。
改善点は見えているので今後、黒字額を拡大させていく自信があります。
ジビエをビジネスとして捉えるのは難しいと言われる大きな理由として挙げられるのが、畜産と違って野生動物という点です。
現状、駆除された鹿の90%が廃棄処分されている中、近年のジビエブームで需要はある、ということでここ数年で鹿の解体施設が大幅に増えました。
農林水産省が公表している一覧表では令和3年6月時点で全国に428施設あります(全て網羅している訳ではないようで実際にはもっと多い)。
もちろんうちも載っています。
頭数をコントロールできる畜産と違って野生動物を扱うビジネスには特有のリスクがあるという意見があります。
ジビエブームに乗って解体施設が乱立した結果、将来的に鹿が減ったらその施設どうするの?
稼働率が下がって施設建設に投じた資金が回収できずに終わるんじゃないの。
という意見です。
ただ、現状、駆除された鹿の90%が廃棄処分ですよ。
まだまだ解体施設が足りないというのが個人的な意見です。
ちなみにジビエ解体施設の運営方法には3パータンあります。
@公設公営
A公設民営
B民設民営
主流はAの公設民営です。
行政が解体施設を建てて、その後の管理運営は別の団体に委託するというパターンです。
ただ民営とはいっても公設である以上、赤字が出れば公費で補填されます。
当然、赤字の状態を放置すれば管理運営団体は潰れて施設が稼働しない負の遺産となってしまいます。
ちゃんと調べた訳ではありませんが、行政依存の甘え体質のまま黒字化が実現できないケースが多いと思いますよ。
私はご存じのようにBの民設民営です。自費を投じて建てました。
黒字運営をしないと潰れる。それのみです。
容易に予想できると思いますが、このBの民設民営パターンは少ないです。
「ジビエはビジネスとして採算が合わないから民間参入は無理、行政がやるものだ」という意見が非常に多い。
時給266円の男が偉そうなことは言えませんが、私が作成した収支計画書ではちゃんと黒字になります。荒唐無稽なでたらめな数字を書いて作った訳ではなく、根拠に基づく現実的な計画書です。
前回のブログに挙げた改善点がクリアできれば黒字になります。
そして時給1,000円以上の男になれたらビジネスモデルとして形にしてフランチャイズ展開を進めて行きます。
今この話を笑って読んでいる人がいるかもしれませんが、言ったもん勝ちで言ったらその通りになります。
もう言ったのでその通りになります。
ここから本題に繋げます。
そんなにジビエ解体施設を増やして将来的に鹿が減ったらどうするの?
という指摘について本質的に考えていきます。
本当に鹿が減るの?
という点です。
私が出した結論を先に言います。
“鹿は今後も増え続ける”
これが私の出した答えです。
その答えに至った理由をこれから説明していきます。
環境省や農林水産省が盛んに鹿の駆除政策を講じている訳ですが、それは鹿が増え過ぎて農林業への被害額が拡大しているからです。
「鹿を駆除せよ」と号令を掛けているのは環境省で、その号令のもとに各地の自治体は駆除を実施しています。
実際に駆除を実行するのは各自治体の猟師です。
私もその一人です。
令和元年度の鹿による農作物被害額、全国で53億円、長野県だけでみると1億3千万円です。
鹿が増え過ぎているんです。
どれだけ増えているのか、環境省が公表しているグラフを見てみましょう。
※画像クリックで拡大
1989年の推定26万頭が2014年には推定246万頭と10倍近く増加しています。
この増え方は異常です。
何故こんな異常な増え方をしたのか。
その要因について環境省が出している資料を見て下さい。
※画像クリックで拡大
資料の通り@〜Dの要因が考えられるとされています。
それぞれについて検証する前に私が引っ掛かった文言がこれです。
増えた理由は科学的に十分検証されていない・・・
って、おいおい・・・
これは環境省が出している資料ですよ。
鹿を駆除せよと号令を掛けている当事者ですよ。
十分検証されていないなんて他人事のように言ってないで検証しなさいよ。
増えた原因を突き止めないで何故有効な駆除政策が講じれるんですか。
と、怒りは一旦引っ込めて@〜Dの要因について検証していきましょう。
先に言っておきますが、この@〜Dの要因、どれか一つが原因になっているという訳ではなく@〜Dが複合的に絡み合って現在の鹿の増加に繋がっていると考えられます。ただこの中に核心的な要因(主因)があるはずです。
それについて検証していきましょう。
@積雪量の減少
温暖化の影響で積雪量が減少したことが要因であるという説です。近年、生態系が乱れるとすぐに温暖化に結び付ける風潮がありますが、ちゃんと検証してみる必要があります。
積雪量の減少と鹿の増加の関連性についてですが、積雪により餌となる植物を十分に摂取することができずに特に小鹿で冬を越せない個体が一定数います。それが温暖化により積雪量が減少し十分な餌を確保できるようになったため冬を越せる個体が増えたということです。ただ豪雪地帯だけで増えているのであればその通りだと思いますが、雪がほとんど降らない九州などでも鹿は増えています。
なので要因の一つではあると思いますが核心的な要因とは言えないでしょう。
また、興味深いエピソードを一つ紹介します。
新型コロナが流行る前、うちの民宿で中国人の学生を度々ホームステイで預かっていました。基本は学生だけでうちに泊まるのですが、たまに先生も一緒に泊まることがありました。夕食に必ず鹿肉料理を出していたのですが、泊まった学生も先生も決まって感激していました。
あるとき先生からこんなことを言われました。
「中国にも鹿はいるけど、とても貴重な動物で今まで食べたことがない」
そのとき私は「え?貴重?」って思ったんです。
「日本では鹿が増え過ぎて困っていますが、中国では増えていないんですか?」
「中国で鹿が増えて困っているなんて話は聞いたことがない」って言うんです。
温暖化しているのは日本だけではなく中国も同様なはずです。
この先生の言ったことがその通りであるとするならば、温暖化により鹿が増えているというのは、やはり関連性としては低そうですね。
A造林や草地造成などによる餌となる植生の増加
かつて日本は盛んに造林事業を行っていました。自然林を切り開いて杉やヒノキなどを植林して人工林に変遷させていました。
この自然林から人工林へ変遷する過程で一旦、草地になります。
それが鹿の餌場となり増加に繋がったとする説です。
ただ、海外の安い木材に依存するようになり、昭和の終わり頃にはこういった人工林を増やす事業は下火になっていたはずで、ここ数年まで続いている鹿の急増とは関連は低そうです。
続いて要因Bを検証したいところですが、これは最後に検証します。
C狩猟者の減少
単純に狩猟者が減ったから鹿の捕殺数も減り、それが原因で鹿が増えているという説です。
先程の環境省の資料より狩猟者数の推移のグラフを抜粋します。
確かに1975年から2000年まで狩猟者が急速に減っているので、この間に鹿が増えたであろうことは推測できます。
ただ、2000年以降の狩猟者数は横ばいで年によっては増えている年もあります。
なので狩猟者数の減少が止まった2000年以降は鹿の増加も横ばい、もしくは緩やかな増加へと転じるはずですが、先ほどの鹿の個体数推移を表した環境省のグラフをご覧ください。
2000年以降も右肩上がりに勢いよく鹿が増えています。
よってこの要因も関連性は低そうです。
D生息数の回復に対応した捕獲規制の緩和の遅れ
(2007年までメスジカは禁猟)
2007年までメスジカを禁猟として保護してきたため繁殖が盛んになり増えたという説です。
これも文字だけで見ると確かにこれは関連性が強そうだなと思うのですが、先ほどのように鹿の個体数推移を表した環境省のグラフを今一度ご覧ください。メスジカの禁猟を解除した以降も右肩上がりに勢いよく鹿が増えています。
よってこの要因も関連性はそれ程強くなさそうです。
最後にBを検証します。
B中山間地域の過疎化などにより生息適地である耕作放棄地の拡大
これですよ。これ。核心的な要因(主因)は。
山から人が減っているのが鹿の増加と大きく関連しています。
中山間地域の田畑や山林などを人が管理することで人間の存在を知らせ、鹿が人間の生活圏に侵入してくるのを防ぐ防波堤となっていました。
それが年々進む中山間地域での人口減少並びに高齢化により管理を放棄した田畑、山林が増えてきました。そういった耕作放棄地は今後もますます増えます。
鹿からするとそういった耕作放棄地はもはや防波堤ではなく、むしろ新たな住処、餌場となります。
ちょっと分かりづらい写真なのですがうちの近所で撮った写真です。
これが耕作放棄地です。
一見、ただの山の中の風景に見えますが、奥から手前にかけて3段になっています。
これは昔田んぼだった跡です。
木や草が生え既に山の一部と化しています。当然、現在ここは人間の生活圏ではなく鹿の生活圏です。
こういった耕作放棄地は中山間地域の至る所にあります。
中山間地域からどれだけ人口が減少しているか具体的に数字で見てみましょう。
豊丘村の住民基本台帳から作成しました。
※画像クリックで拡大
こんなもん作って暇人だな〜と思われるかもしれませんが、ジビエ事業について講演を依頼されることが時々あり、数年前に必要だったので作りました。
私が住んでいる地区が壬生沢区(中山間地域)、豊丘村役場があるのが田村区(住宅密集地)です。
両地区の人口数の推移を見ると一目瞭然です。
40年間、田村区ではそれ程人口が減少していないのに壬生沢区では半減しています。
人口減少に応じて耕作放棄地は増えます。今後も壬生沢区では人口が減り続け更に耕作放棄地が増えることは確実です。
鹿の生活圏がどんどん拡がっていきます。
当たり前ですがこの村だけではなく日本中の中山間地域で人口減、耕作放棄地拡大が進んでいます。
中山間地域での人口減少と鹿の個体数推移を表した環境省のグラフは見事に反比例しています。
“人が減ったら鹿が増える”ということです。
ちなみに見たくないかもしれませんが、日本の人口の長期的推移(予測)を見てみましょう。
※画像クリックで拡大
ご覧の通り今後人口は急激に減ります。
ということは鹿の住処、餌場は今よりも更に加速して拡大していきます。
この人口推移の表で明治維新から急激に人口が増えていますが、明治維新前の人口が少なかった時代は相当鹿が多く生息していたと思われます。
当時の鹿の個体数を確認するデータがないのであくまで推測です。
それに関連して興味深い文献があるので紹介します。
徳川吉宗の時代、享保10年(1725年)3月と翌享保11年(1726年)3月の2回、害獣駆除と武芸奨励のため大掛かりな鹿狩りを現在の千葉県松戸市で行った際の記録です。
この2回の鹿狩りで約1,300頭の鹿を獲ったというのです。
松戸市立博物館のホームページにその記載があります。
※画像クリックで拡大
現代の松戸市の風景
ここでかつて、たった2回の鹿狩りで1,300頭の鹿が獲れたって信じがたいですよね。
ここ豊丘村の猟友会総会時の資料では、令和元年度に捕獲した鹿は166頭です。年間村全体で166頭です。
当時は今とは桁違いに鹿が多く生息していたことが推測できます。
かつて人口の増加とともに奪われた住処を、これからやってくる急激な人口減少で鹿は取り返しにくるでしょう。
鹿の個体数推移を表した環境省のグラフを見て疑問に思った方もいるかと思います。2014年を境に鹿の個体数が減少に転じています。
確かに減っていますが、これは環境省と農林水産省がここ数年、鹿の捕獲を強化しているためです。
具体的には自治体への交付金の拡充です。
各自治体は増えた交付金を捕獲報奨金の増額や捕獲経費等に充てて捕獲頭数を増やしています。
※画像クリックで拡大
交付金の拡充により捕獲数を増やして鹿を減らす政策がいつまでも続くとは思えません。グラフを見る限り2014年を境に鹿の個体数は減少に転じてはいますが、いずれ鹿の増加のスピードに耐え切れなくなり減少は止まり再び右肩上がりのグラフになると予測します。
“駆除したら食べる、それが当たり前の社会を作る”
現状駆除された鹿の90%が廃棄処分、この無慈悲な駆除が常態化している現状を変えなければなりません。
ジビエを単なるブームと位置付けるのではなく、産業として育てる必要があります。
最後に、もしこの投稿を読んでいる学生で、農業や環境、生態系、動物学なんかを学んでいる学生がいたら、鹿が増えた要因@〜Dを科学的に検証して解明して欲しいと思います。
環境省は解明する気がない様子なので、是非取り組んでみて下さい。
私が学生時代に戻れるのであれば自分でやるのですが、そんなことは無理なのでお願いします。
@〜Dの要因を説明変数として、必要なデータをひたすら収集して多変量解析で分析すれば各要因の因果関係がはっきり数字で表れます。
そして間違いなく核心的要因(主因)はBの“山から人が減っているから”と結論が出るはずです。
そしてそれを環境省に渡してあげて下さい。
鹿が増える要因(各要因の因果関係)を解明できたということは、今後の鹿の個体数推移の予測もより正確にできるということです。
多変量解析は私も大学生時代に有機農産物の表示制度について研究した際に使いました。そして研究結果が学会誌に掲載され学長賞を受賞しました。
このテーマについて研究して解明すれば学長賞を貰えるかもしれませんよ。
と、自分ではやらずに人にやってもらおうとしているしたたかな人間であることがバレたところで終わります。
それでは。
posted by mibu at 23:06|
Comment(2)
|
日記
<<前の3件
..
2
3
4
5
6
..
次の3件>>
リンク集
農家民宿ひがし
検索ボックス
<<
2023年08月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
最近の記事
(08/17)
死生観
(04/12)
ジビエ解体処理施設の作り方
(03/29)
触り続ける
(03/01)
引っ越し
(01/29)
有吉佐和子
最近のコメント
死生観
by 壬生 (08/19)
死生観
by 望月一義 (08/18)
触り続ける
by 壬生 (04/06)
触り続ける
by まるとうわさび (04/06)
遥か遠い理想の社会
by 壬生 (01/14)
タグクラウド
カテゴリ
日記
(366)
過去ログ
2023年08月
(1)
2023年04月
(1)
2023年03月
(2)
2023年01月
(1)
2022年12月
(2)
2022年11月
(1)
2022年10月
(1)
2022年05月
(1)
2022年04月
(1)
2022年02月
(1)
2022年01月
(1)
2021年09月
(2)
2021年07月
(1)
2021年03月
(2)
2021年02月
(1)
2021年01月
(1)
2020年12月
(1)
2020年11月
(1)
2020年10月
(1)
2020年09月
(2)
RDF Site Summary
RSS 2.0