2022年04月21日

イモリの楽園


山菜の中でもこれから最盛期を迎えるのが “ワラビ” です。
村内にワラビの群生地があります。
私有林ではなく村有林なので入っても問題ありません。

毎年、これからの時期にお越しいただくお客様はワラビ狩り希望のご要望が多いので、例年4月20日前後に発生状況を確認しに行っています。
今年は今日行ってきました。
まあ例年通りといった感じで、最盛期(5月に入ってから)に比べると1/5程度の発生具合、今日の時点でギリギリお客さんを連れていけるレベルです。

今年のワラビ狩りガイドも問題なく出来るでしょう。
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発生状況の確認と同時に安全確認も行います。

●崩落や倒木はないか?
→ありましたが軽微なもので危険な状況ではありませんでした。

●マムシは出ないか?
→今日は出ませんでしたが、稀に出るので必ず長靴着用で参加してもらいます。

●他の注意点
→おそらく豚コレラが原因だと思われますが、ウリ坊(猪の子)の死骸が一頭、腐敗して悪臭を放っているエリアがあったため、屋外とはいえマスクの携帯を伝えます。そして絶対に近付かないように。

発生状況の確認良し、危険箇所・注意事項の確認も良し、あとはアレだな♪
アレを確認しに行くだけだな♪

毎年、ワラビの状況確認に合わせて楽しみがあるんです☆

準絶滅危惧種に指定されている “アカハライモリ” が大繁殖している小さな池を確認しに行きます。
このイモリの繁殖池を発見したのは2015年、ワラビの群生地周辺を何気なく散策していた時に見付けました。
発見した時はもう嬉しくて。

うちの近所でも、もうほとんど見ることはない、毎年田んぼで一匹会えるかどうかというレベルです。
それが大繁殖しているじゃないですか、もう嬉しくて嬉しくて。
こういう環境が人が滅多に寄り付かない山奥にちゃんと残ってたんだ〜♪って
“イモリの楽園” と名付けました。

発見した2015年以降、毎年4月20日前後のワラビの状況確認に合わせてイモリの楽園も観察しに来ていました。

2015年4月の発見時の写真
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2019年4月に撮影した写真
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毎年4月20日前後に来るとちょうど産卵期で、もの凄い数の卵が水中の草に産み付けられられていました。
写真には撮りませんでしたが、去年のこの時期もここへ来て、イモリの楽園が維持されていることを確認しています。
1人でイモリを眺めてニヤニヤしていました。

この環境がずっと残って欲しいと願っていました。
ずっと残って欲しい・・・

ただ心配していたことがありました。
ここから約1Km離れた場所でリニア新幹線の掘削工事が始まることです。
非常口とトンネル本坑(実際にリニアが走るトンネル)を繋ぐための斜坑の掘削工事が去年の7月からスタートしました。
掘削による発生土置き場も付近に設置されました。

心配しながらも掘削が進む方向が、イモリの楽園へ向かってくるのではなく反対方向だったので、たぶん大丈夫だろうと楽観視していました。

こうなってしまった結果はリニア工事(本工事だけではなく関連工事も含む)が原因だとは断言できません。
専門家ではないので、証拠を見せろと言われても見せれません。

今日、イモリの楽園を確認しに行ったら消滅していました。
その事実だけは変えようがありません。

2015年から毎年この時期に必ず見に来ていました。
毎年変わらないイモリの楽園がそこにはありました。

去年の7月から1Km先でリニアの掘削工事が始まり発生土置き場もできました。
イモリの楽園の消滅はそれが原因であるという証拠は私には出せません。

2022年4月21日(本日)の写真
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池の姿が目に入った瞬間、愕然としました。
水量が少ない、水が錆びたような色をしている、池の周辺の草が枯れている、池の傍を流れている水も錆びたような色をしている、池の中を覗き込んでもイモリは一匹も居ない、卵もない。
この池からは全て絶えてしまいました。

去年の4月まではこの池がイモリの楽園があったことを自分の目で確認をしています。

たまらなく悲しく、同時にここに生息していたイモリに申し訳ない気持ちになりました。

ネット上で閲覧できますが、今回のこの発生土置き場における環境保全対策についてJRが公表している資料があります。
これから部分的に画像で紹介しますが、詳細を見たい方は下記URLをご参照ください。
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/efforts/nagano/_pdf/toyookamura-sakashima.pdf


豊丘村内発生土置き場(坂島)における環境保全について
坂島発生土@.jpg

この資料の中に周辺に生息する重要な種に対する環境保全措置が記されています。
坂島発生土A.jpg

アカハライモリについて
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このように書かれています。
【工事施工ヤード周辺で2地点約20個体を確認。同質の生息環境が広く分布しているため、生息環境は確保される。】

2地点20個体しか確認出来ていないのに、心配する必要はないみたいなことを何故書けるんですかね?
他の種についても軒並み【生息環境は確保される】で締めくくっています。
適当に書いているとまでは言いませんが、負担を掛ける地域・自然環境に対して真摯に向き合っているとは個人的には思えません。

民主主義の国ですから、リニア反対よりも賛成が多ければその通りになります。
それは理解していますよ。

もう元には戻りませんが、ここにイモリの楽園があったという事実を深く私の脳裏に刻み付けておきます。

posted by mibu at 20:44| Comment(0) | 日記